【第28話】では、タスクの学びを「ルール」として貯めるプレイブックを紹介しました。今回はその一歩先です。ルールの箇条書きを貯めるのではなく、「次回用の指示テンプレートそのもの」をAIに書き換えさせます。
違いはこうです。プレイブックは「守るべきルール集」で、使うときは自分のプロンプトに添える形。今回の型では、プロンプト自体が完成品として更新されていくので、次回は出てきたテンプレを丸ごとコピペするだけになります。
これが Self-Modification Loop(自己修正ループ)。AIが自分の取扱説明書を、使われるたびに自分で更新し続ける仕組みです。
Self-Modification Loopとは?
Self-Modification Loopは、一言でいうと「タスク完了後に、今回の経験を反映した『改良版の指示テンプレート』をAIに出力させ、次回はそれを使う」循環の型です。
たとえると、料理のレシピカードです。作るたびに「砂糖は小さじ1減らす方が好み」と気づいたら、メモを別に貯めるのではなく、レシピカード自体を書き直しますよね。次に作るときは最新のカードを見るだけでいい。プロンプトでも同じことをします。
サイクルは3ステップです。
- 実行:手持ちの指示テンプレでタスクを進める
- 更新:終了後、「今回を踏まえた改良版テンプレ」を出力させ、保存を上書き
- 次回:最新版テンプレをそのまま使う(→また①へ)
Day 5のMeta-Prompting(プロンプトをAIに改善させる)と発想は同じですが、あちらが「思い立ったときに実施する単発の改善」なのに対し、こちらは「タスクのたびに自動で回る継続の仕組み」です。なお、この型は特定の研究に基づくものではなく、繰り返しタスクの指示を育てるための実務パターンです。
なぜ効くのか
①「気づき」が最も使いやすい形で保存される
ルールのメモは、次回使うときに「どう指示文へ反映するか」を考える手間が残ります。テンプレごと更新させれば、気づきはすでに指示文の中に織り込み済み。次回の自分は何も考えずコピペするだけです。
②改良の意図を書かせると、変な改変に気づける
更新時に「どこを・なぜ変えたか」も併記させます。差分と理由が見えるので、余計な改変が混ざったときにその場で却下できます。ブラックボックスな自動進化ではなく、人間が承認する進化です。
コピペOKプロンプト
タスクの最後に、これを投げます。
今回のタスクを踏まえて、次回わたしが使うべき
「改良版の指示テンプレート」を出力してください。
条件:
①今回うまくいった点は維持、つまずいた点は指示文の改善で防ぐ
②変更した箇所と、その理由を最後に箇条書きで併記する
③テンプレートはこのままコピペで使える完成形にする
条件③「コピペで使える完成形」が仕上がりを決めます。これがないと「〜を追加するといいでしょう」というアドバイス形式で返ってきて、結局自分で編集する手間が残ります。完成形を出させてください。
実践例:before / after
「読んだ本の読書メモ作成」で試してみました。月に数冊、同じ形式でメモを作る繰り返しタスクです。
🔴 before:同じ指示を使い続けた場合
最初に作った「本の要点を5つと感想の下書きをまとめて」という指示を、毎回そのまま使っていました。使ううちに「要点が抽象的すぎる」「実生活で試せる形になっていない」という不満が出てきましたが、その場で口頭修正するだけで、指示文は初版のまま。次の本でもまた同じ不満から始まる、成長しないループでした。
🟢 after:ループを回した場合
2冊目のメモ作成後に更新を頼むと、こんな改良版が返ってきました。
【読書メモ作成テンプレート v3】
以下の本の読書メモを作ってください。
・要点5つ:各要点に「本の中の具体例」を1つ添える
・今日から試せる行動:1つ(具体的な場面つきで)
・刺さった一文:引用と、なぜ刺さったかの仮説
・この本を薦めるなら誰か:1行
【変更箇所と理由】
・「具体例を添える」を追加(前回、要点が抽象的で
後から読み返しても内容を思い出せなかったため)
・「試せる行動」を追加(読みっぱなし防止のため)
→ 以降は毎回このループを回すだけ。5冊目の頃にはv6まで育ち、自分の読書スタイルに完全に馴染んだテンプレになっていました。面白いのは、変更理由の履歴を見返すと「自分は読書に何を求めているのか」が言語化されていくことです。テンプレの進化が、自己理解の記録にもなります。
使いどころと注意点
✅ こんな場面で使う
- 月数回ペースの定型タスク(読書メモ・振り返り・レビューもの)
- 「指示文への不満はあるが、直すのが面倒」なタスク
- 自分の好みがまだ言語化できていないタスク(進化の過程で言語化される)
❌ これには向いていない
- すでに完成度の高い仕様書がある作業(Day 20の仕様書運用で十分)
- 毎回性質が大きく変わるタスク(テンプレの継承が機能しない)
注意点として、更新のたびにテンプレが長くなりがちです。AIは「追加」は得意でも「削除」は消極的なので、数回に一度「使われていない項目を削って、テンプレをスリム化して」とダイエット指示を挟んでください。育てると同時に、太らせない。
🔧 上級者向け:バージョン履歴を残す
ここは応用の話なので、読み飛ばしてOKです。
上書き保存ではなく、v1・v2・v3…と履歴を残しておくと、2つの利点があります。改変で使い勝手が落ちたとき前の版に戻せること、そして変更理由の履歴が「自分の好みの変遷記録」として読めることです。メモアプリに「読書メモテンプレ」のページを1つ作り、最新版を先頭、旧版を下に積む形が手軽です。
まとめ
- Self-Modification Loopは「タスク後に改良版テンプレをAIに出させ、次回それを使う」循環の型
- 「コピペで使える完成形」を条件にするのが仕上がりの鍵
- テンプレは太りやすい。定期的なスリム化指示をセットで
月に数回やっている定型タスクがあれば、次の1回の最後に更新指示を足してみてください。3回も回せば、初版とは別物の「自分専用テンプレ」に育っています。
⚠️ この記事の情報は執筆時点(2026年6月)の内容です。AIツールの仕様・挙動はアップデートで変わることがあります。最終確認は各サービスの公式サイトや一次情報でお願いします。
次回予告
次回は第6章の最終回、「Auto-Harness Optimization(仕組み全体の反復改善)」を紹介します。個別のプロンプトではなく、自分のプロンプト運用「全体」を月1回まとめて改善する型です。
👉Auto-Harness Optimizationとは?プロンプト運用全体を月1で改善するプロンプト術


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