第37話のCLAUDE.mdで「毎回の説明」はなくなりました。でも、もうひとつ課題が残っています。「手順が長い作業の説明は、CLAUDE.mdに書くと太りすぎる」問題です。
月次レポートの作成手順、バックアップの取り方、特定の変換作業のやり方。こうした「たまにしか使わないが、使うときは長い手順が必要」な知識をCLAUDE.mdに全部書くと、毎セッション読み込まれるファイルが手順書だらけになってしまいます。
この問題への公式の答えが Skills(スキル)。手順書を別フォルダに置いておくと、関連するタスクのときだけAIが自動で読み込んでくれる仕組みです。
Skillsとは?
Skillsは、特定の作業の手順・ノウハウをまとめたフォルダです。プロジェクトの「.claude/skills/」の下にスキル名のフォルダを作り、その中に「SKILL.md」というファイルで手順を書いておきます。
たとえると、職場の棚に並んだ業務マニュアルです。全マニュアルを毎朝全部読む人はいません。経費精算のときだけ経費マニュアルを棚から取る。Skillsはこの「必要なときだけ棚から取る」動きを、AIが自動でやってくれる仕組みです。あなたの依頼がスキルの説明文と一致すると、AIがそのSKILL.mdを読み込んでから作業に入ります(スラッシュコマンドで手動起動する使い方もあります)。
CLAUDE.md(第37話)との使い分けはこう整理できます。
- CLAUDE.md:毎セッション必要な事実・ルール(常時読み込み)
- Skills:特定の作業のときだけ必要な手順(必要時のみ読み込み)
気づいた方もいるかもしれません。これは第18話で紹介した「Just-In-Time(必要なときに必要な分だけ)」の考え方そのものです。あのとき手動でやっていた工夫が、Skillsでは公式機能として自動化されています。
📎 Claude Code公式ドキュメント:Extend Claude with skills
https://code.claude.com/docs/en/skills
なぜ効くのか
①手順の品質が「その日の説明力」に依存しなくなる
口頭で手順を説明すると、日によって抜けが出ます。スキルに書いた手順は毎回一言一句同じものが読み込まれるので、作業品質が安定します。第20話の仕様書の「手順版」です。
②いくつ作っても、普段の会話は重くならない
スキルは必要なときしか読み込まれないので、10個20個と貯めても普段のセッションを圧迫しません。「作業手順のライブラリ」を心置きなく育てられるのが、CLAUDE.mdに書き込む方式との最大の違いです。
コピペOKテンプレート
「.claude/skills/monthly-report/SKILL.md」として保存する例です(記法の最新仕様は公式ドキュメントで確認してください)。
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name: monthly-report
description: 家計の月次レポート作成。「月次レポート」「今月のまとめ」
を頼まれたときに使う。
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# 月次レポート作成手順
1. results/ フォルダの当月の集計CSVを読み込む
2. 前月のレポート(reports/内)と同じ構成で作成する
- 費目別の増減(前月比)
- 特に増えた費目トップ3と考えられる要因
- 予算オーバーの費目には ⚠️ を付ける
3. reports/YYYY-MM-report.md として保存する
4. 最後に3行のサマリーを会話に出力する
descriptionに「どんな頼まれ方をしたときに使うか」を書くのがコツです。AIはこの説明文を見てスキルを使うかどうか判断するので、実際に自分が言いそうなフレーズ(「月次レポート」「今月のまとめ」)を入れておくと、狙った場面で確実に発動します。
実践例:before / after
第37・38話から続く家計簿プロジェクトで、「月次レポート作成」をスキル化してみました。
🔴 before:毎月手順を説明していた頃
月に1回しかやらない作業なので、毎回「えっと、前月比を出して、増えた費目を3つ挙げて、それから…」と手順を思い出しながら説明していました。先月は「予算オーバーに⚠️を付ける」を言い忘れて、レポートの見た目が前月と変わってしまいました。月1回の作業は、頻度が低いからこそ手順を忘れるという皮肉があります。
🟢 after:スキル化した場合
上のSKILL.mdを置いてからは、「今月のまとめお願い」の一言だけ。descriptionのフレーズに一致してスキルが自動で読み込まれ、⚠️付けまで含めた手順どおりのレポートが毎月同じ品質で出てきます。手順を覚えておく仕事から、完全に解放されました。CLAUDE.mdには「毎回必要なルール」だけが残り、月1の長い手順はスキル棚へ。それぞれのファイルがスリムなまま役割分担できています。
使いどころと注意点
✅ スキル化すべき作業
- 手順が3ステップ以上ある繰り返し作業(レポート・変換・バックアップ)
- 頻度が低くて手順を忘れがちな作業(月次・四半期もの)
- 「前回どうやったっけ」と過去の会話を探した経験のある作業
❌ スキル化しなくていいもの
- 毎セッション必要なルール(それはCLAUDE.mdへ)
- 一度きりの作業(手順書を書くコストが回収できない)
注意点として、スキルが発動しないときは、たいていdescriptionと頼み方が噛み合っていません。「レポート作って」で発動させたいのにdescriptionに「月次まとめ」としか書いていない、というすれ違いです。発動しなかったら、自分の実際の頼み方をdescriptionに追記する。これだけで発動率は安定します。
🔧 上級者向け:スキルを「育てる」
ここは応用の話なので、読み飛ばしてOKです。
作業が終わるたびに「今回の学びをSKILL.mdに反映して」と頼むと、手順書自体が改善されていきます。お気づきの通り、これは第29話の自己修正ループのスキル版です。手順の抜けで失敗したら、その失敗を防ぐ1行をスキルに足す。月1の作業なら、1年で12回分の学びが手順書に蓄積されます。この章で紹介した4つの機能(Plan Mode・CLAUDE.md・サブエージェント・Skills)は、どれも「シリーズ前半の型を、仕組みとして定着させる受け皿」として使えます。
まとめ + 第8章の振り返り
- Skillsは「必要なときだけ自動で読み込まれる手順書」の仕組み
- 常時必要なルールはCLAUDE.md、たまに必要な手順はSkills、という使い分け
- descriptionには自分が実際に言いそうなフレーズを入れる
これで「Claude Codeで自動化する」話は完結です。実行前に計画を見る(第36話)、ルールをファイルに置く(第37話)、役割と権限を分ける(第38話)、手順を棚に並べる(第39話)。プロンプトを打つ人から、AIが働く環境を設計する人へ。この章で紹介したのは、その最初の一歩でした。次回はいよいよ最終回です。
⚠️ この記事の情報は執筆時点(2026年6月)の内容です。Claude Codeの機能・記法はアップデートで変わることがあります。最新の仕様は必ず公式ドキュメントで確認してください。
📎 引用・参考
・Claude Code公式ドキュメント “Extend Claude with skills”
https://code.claude.com/docs/en/skills
次回予告
次回はシリーズ最終回、「やめたほうがいい3つの習慣」です。39日かけて「やるべきこと」を紹介してきましたが、最後は逆に、多くの人がやりがちな非効率な習慣を、研究の根拠とともに手放していきます。
👉 最終回:AI活用でやめたほうがいい3つの習慣


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