【第32話】Verbalized Samplingとは?確率付きで案を出させて発想の幅を広げるプロンプト術

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AIにアイデア出しを頼むと、「どれも無難で、正直ちょっとつまらない」と感じることはありませんか。

5案頼んでも、テイストの違う無難案が5つ並ぶだけ。実はこれ、AIの構造的なクセです。AIは訓練の過程で「多くの人に好まれる無難な答え」に出力が寄っていく傾向があり、本当はもっと多様な案を出せる能力があるのに、その引き出しが開きにくくなっています。

今回紹介する Verbalized Sampling(言語化サンプリング) は、その閉じた引き出しを一言で開ける、2025年発表の研究に基づく型です。やることは「確率付きで出して」と頼むだけ。

Verbalized Samplingとは?

Verbalized Samplingは、一言でいうと「複数の案を、それぞれの生成確率(っぽさの度合い)付きで出させる」手法です。

たとえると、ガチャガチャの中身一覧です。普通にAIへ頼むのは、ガチャを1回回して出てきたものを受け取る行為。よく出る「当たり障りのない景品」ばかり引くことになります。確率付きで出させるのは、「中に何が入っていて、それぞれ何%で出るのか」の一覧表を最初から見せてもらう行為です。一覧の下の方にある「レア枠」まで見えるようになります。

元になった研究について

2025年に発表された研究で、「コーヒーのジョーク5つを、それぞれの確率付きで生成して」のように確率分布を言語化させるだけで、創作系タスクの出力の多様性が直接指示の1.6〜2.1倍になったと報告されています。訓練不要・プロンプトだけで機能し、高性能なモデルほど効果が大きい傾向も観察されています。研究チームは、無難な出力に偏る現象(モード崩壊)の原因を、人間の評価者が「見慣れた文章を好む」傾向にあると分析しており、確率を言語化させることが多様性を取り戻す鍵だと示しています。

📎 Zhang, Yu, Chong, Sicilia, Tomz, Manning, Shi (2025) “Verbalized Sampling: How to Mitigate Mode Collapse and Unlock LLM Diversity”
 https://arxiv.org/abs/2510.01171

なぜ効くのか

①「分布を出す」タスクに変わるから、1点に集中しなくなる
普通の頼み方だと、AIは「一番よさそうな答え」を狙いにいきます。確率付きで複数出させると、タスクが「答えを1つ選ぶ」から「答えの広がり全体を描写する」に変わり、端っこにある個性的な案まで出てくるようになります。

②確率の数字が「無難さの見える化」になる
確率70%の案は定番、5%の案は変化球。数字を見るだけで「どれが安全牌で、どれが攻めた案か」が一目でわかります。選ぶ側の判断材料としても優秀です。

コピペOKプロンプト

以下のお題について、回答案を5つ、
それぞれの生成確率(%)付きで出してください。
そのうち1つは、確率5%以下の「普通は思いつかない案」を
必ず含めてください。
お題:[   ]

2文目の「確率5%以下を必ず1つ」が攻めの一手です。研究の基本形は確率付きで出させるだけですが、レア枠を明示的に要求することで、変化球が確実に1つ混ざるようになります。なお、この確率はAIの自己申告であり、厳密な数値ではありません。「無難さの目安」として読んでください。

実践例:before / after

会社の忘年会の出し物アイデア」で試してみました。無難案が出やすいお題の典型です。

🔴 before:普通に頼んだ場合

「会社の忘年会の出し物アイデアを5つください。」

→ 結果:「ビンゴ大会」「クイズ大会」「カラオケ」「今年の重大ニュース発表」「じゃんけん大会」。全部、去年もどこかの会社でやっていそうな案です。間違ってはいない。でも、この案を見て「それだ!」とはなりません。

🟢 after:Verbalized Samplingで頼んだ場合

会社の忘年会の出し物アイデアを5つ、
それぞれの生成確率(%)付きで出してください。
そのうち1つは、確率5%以下の「普通は思いつかない案」を
必ず含めてください。

→ 結果:「ビンゴ大会(65%)」「クイズ大会(55%)」のような定番に混ざって、「社員の子ども時代の写真で『誰でしょうクイズ』(12%)」「部署対抗・上司のモノマネ選手権を本人審査で(4%)」といった案が出てきました。確率4%の案はさすがに攻めすぎでしたが、12%の写真クイズは「それ面白いかも」と思える絶妙なライン。採用したのは、beforeでは絶対に出てこなかったこの12%案でした。

使いどころと注意点

✅ こんな場面で使う

  • 企画・ネーミング・贈り物などのアイデア出し全般
  • 「無難案しか出てこない」と感じているお題
  • 定番と変化球を両方見て選びたいとき

❌ これには向いていない

  • 正確性が最優先のタスク(事実確認・計算など。多様性は不要)
  • 答えの幅が最初から狭いお題(レア枠の意味がない)

注意点として、低確率の案は「面白いが実行不可能」なことも多いです。レア枠は採用前提ではなく、発想の壁を壊すための起爆剤と考えてください。4%案そのものは没でも、「本人を巻き込む方向はアリだな」という気づきが12%案の評価を変える。そういう連鎖が起きるのがこの型の面白さです。

🔧 上級者向け:確率帯を指定して掘る

ここは応用の話なので、読み飛ばしてOKです。

一度出た結果を見て、「確率10〜20%の帯だけで、さらに5案ください」と特定の帯を掘り下げる使い方があります。定番すぎず、突飛すぎない「ちょうどいい変化球ゾーン」を集中的に探索できます。Day 3のTree of Thoughtsと組み合わせて、掘り当てた帯の案を枝として深掘りするのも効果的です。

まとめ

  • Verbalized Samplingは「案を確率付きで出させて多様性を解放する」型(2025年の研究発)
  • 「確率5%以下を1つ必ず」の追加でレア枠を確保
  • 確率は自己申告の目安。レア案は起爆剤として使う

「確率付きで」の一言を足すだけなので、コストはほぼゼロです。次のアイデア出しで試して、一覧の下の方に眠っていた変化球を覗いてみてください。

⚠️ この記事の情報は執筆時点(2026年6月)の内容です。AIツールの仕様・挙動はアップデートで変わることがあります。最終確認は各サービスの公式サイトや一次情報でお願いします。

📎 引用・参考

・Zhang et al. (2025) “Verbalized Sampling: How to Mitigate Mode Collapse and Unlock LLM Diversity”
 https://arxiv.org/abs/2510.01171

次回予告

次回は「反事実アンカリング」を紹介します。見積もりや予想を頼む前に、あえて極端な仮定をぶつけて、AIの答えの偏りを補正する型です。

👉反事実アンカリングとは?極端な仮定でAIの見積もりの偏りを直すプロンプト術

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