Routing Patternとは?AIに振り分け役を置いて回答の専門性を上げるプロンプト術

AI情報まとめ

AIに相談ごとを投げたとき、「間違ってはいないけど、どこか的を外した一般論」が返ってきたことはありませんか。

こちらの質問がざっくりしていると、AIの回答もざっくりします。原因のひとつは、質問が「どのタイプの相談なのか」を特定しないまま、AIが回答を書き始めてしまうことです。人間の窓口業務なら、まず「ご用件は?」と聞いて担当部署につなぎますよね。AIにはその受付がありません。

今回紹介する Routing Pattern(ルーティングパターン) は、その受付係をAIの中に作る型です。今日から第3章「AIを軍団で動かす」に入ります。

Routing Patternとは?

Routing Patternは、一言でいうと「依頼をまず分類させて、そのタイプに最適化した専門役に答えさせる」手法です。

たとえると、病院の総合受付です。「なんとなく調子が悪い」という患者さんに、受付がいきなり薬を出すことはありません。症状を聞いて、内科なのか整形外科なのかを判断して、専門の診察室に案内します。「分類してから専門家に渡す」から、的確な対応ができる。この仕組みをプロンプトで再現します。

この考え方は、Claudeの開発元Anthropicが公開しているエージェント設計のガイドでも「Routing」というワークフローパターンとして紹介されています。入力を分類して専門化されたタスクに振り分けることで、それぞれの処理をより最適化できる、という設計思想です。

📎 Anthropic “Building effective agents”(公式エンジニアリングブログ)
 https://www.anthropic.com/engineering/building-effective-agents

本来は複数のAIを組み合わせるシステム設計の話ですが、1つのチャットの中で「役を切り替えさせる」だけでも再現できます。複数のアカウントもツールも不要です。

なぜ効くのか

①「何の相談か」が確定してから回答が始まる
分類ステップを挟むと、AIは回答を書く前に「これはリサーチ系の依頼だ」「これは分析系だ」と依頼の性質を言語化します。方向を定めてから走り出すので、的外れな一般論になりにくくなります。

②専門役用の指示が自動で作られる
この型では、分類したあとに「そのタイプに最適化した指示文」をAI自身に作らせます。つまり専門家用のプロンプトを人間が書かなくても、AIが自分で用意してくれる。万能役として曖昧に答えるより、専門役として答えるほうが出力の密度は上がります。

コピペOKプロンプト

以下をそのままコピーして、「[   ]」に依頼を入れてください。

あなたは「振り分け担当」です。以下の依頼を読み、
①リサーチ系 ②文章作成系 ③分析系 ④アイデア出し系
のどれかに分類してください。
その分類に最適化されたシステムプロンプトを5行で作成し、
それを使って再度この依頼を実行してください。
依頼:[   ]

分類の選択肢は自分の用途に合わせて変えてOKです。仕事なら「①資料作成 ②メール文面 ③データ整理 ④企画」のように、自分がよく頼む依頼のタイプで4分類を作っておくと、振り分けの精度が上がります。

実践例:before / after

毎月の食費をなんとか減らしたい」という相談で試してみました。節約術の話なのか、家計の分析の話なのか、方向が曖昧な質問の典型です。

🔴 before:普通のプロンプト

「毎月の食費を減らしたいです。どうすればいいですか?」

→ 結果:「自炊を増やしましょう」「まとめ買いをしましょう」「特売日を活用しましょう」という、どこかで聞いたことのある節約術のリストが返ってきました。すでに自炊している人にとっては、ほぼ役に立たない内容です。

🟢 after:Routing Patternを使ったプロンプト

あなたは「振り分け担当」です。以下の依頼を読み、
①リサーチ系 ②文章作成系 ③分析系 ④アイデア出し系
のどれかに分類してください。
その分類に最適化されたシステムプロンプトを5行で作成し、
それを使って再度この依頼を実行してください。
依頼:毎月の食費を減らしたい。夫婦2人暮らし、自炊は週5でしている。
外食は月2回程度。それでも食費が月6万円かかっている。

→ 結果:振り分け担当がこの依頼を「③分析系」と分類しました。「すでに自炊率が高いのに食費が高い=行動ではなく構造に原因がある可能性。内訳の分析が先」という判断です。そのうえで家計分析役としてのプロンプトが作られ、「まず食費6万円の内訳を5項目に分けてください」と、原因の特定から始まる回答に変わりました。節約術のリストではなく、「うちの場合どこに問題があるか」を一緒に探す流れになったのが大きな違いです。

使いどころと注意点

✅ こんな場面で使う

  • 相談の方向性が自分でも曖昧なとき(何系の問題か分からない悩み)
  • 一般論ばかり返ってきて困っているテーマ
  • 同じ窓口にいろいろなタイプの依頼を投げたいとき

❌ これには向いていない

  • 依頼のタイプが最初から明確なとき(直接その専門役に頼めばよい)
  • 一問一答で済む単純な質問(分類のステップが無駄になる)

注意点として、依頼文に情報が少なすぎると、分類自体が当てずっぽうになります。実践例のように、状況(2人暮らし・自炊週5・月6万円)を1〜2行添えるだけで、振り分けの精度は大きく変わります。

🔧 上級者向け:分類を確認してから実行させる

ここは応用の話なので、読み飛ばしてOKです。

分類が間違っていると、その後の回答も全部ズレます。重要な相談では、プロンプトの最後を「分類とその理由だけをまず提示して、わたしの確認を待ってから実行してください」に変えると安全です。

まず分類結果とその理由だけを提示して、
わたしが「OK」と言ってから本回答を実行してください。

分類のところに人間のチェックを1回挟む。ひと手間ですが、方向違いの長文回答を読まされる無駄がなくなります。

まとめ

  • Routing Patternは「分類→専門役プロンプト作成→実行」を1回で走らせる型
  • 方向が曖昧な相談ほど効果が出る。状況を1〜2行添えるのがコツ
  • 重要な相談では分類の確認ステップを挟むとより安全

「一般論しか返ってこない」と感じている相談ごとがあれば、この型で投げ直してみてください。分類の結果を見るだけでも、「自分の悩みはそもそも何系の問題なのか」が整理されて、それ自体が発見になることがあります。

⚠️ この記事の情報は執筆時点(2026年6月)の内容です。AIツールの仕様・挙動はアップデートで変わることがあります。最終確認は各サービスの公式サイトや一次情報でお願いします。

📎 引用・参考

・Anthropic “Building effective agents”(公式エンジニアリングブログ)
 https://www.anthropic.com/engineering/building-effective-agents

次回予告

次回は「Parallelization(並列化)」を紹介します。同じ問いを5人の専門家の視点で並列に解かせて、多数決で結論を出す型です。重要な判断をAIに相談するときの安心感が変わります。

👉Parallelizationとは?5人のAI専門家の多数決で答えの信頼性を上げるプロンプト術

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