Intent Encodingとは?判断基準を先に渡してAIを代理人にするプロンプト術

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AIに何か相談するたびに、「あ、それはうちの場合ちょっと違ってて…」と毎回同じ説明をしていませんか。

AIの提案は正論なんです。でも、こちらには「予算より時間を優先したい」「これだけは譲れない」といった自分なりの判断基準がある。それを伝えていないから、毎回「一般論→訂正→やり直し」のループになります。

今回紹介する Intent Encoding(意図の明文化) は、自分の価値観・優先順位・NGラインを最初に1回だけ明文化して渡す型です。これを渡した瞬間、AIは「指示を待つ道具」から「あなたの基準で考える代理人」に変わります。

Intent Encodingとは?

Intent Encodingは、一言でいうと「判断に迷ったときの拠り所となる基準を、先に明文化してAIに渡す」手法です。

たとえると、旅行を任せられる友人です。長い付き合いの友人は、あなたが「混んでる場所が苦手」で「食事にはお金を惜しまない」ことを知っています。だから細かく指定しなくても、あなたが選びそうなプランを出してくる。この「わかってる感」の正体は、あなたの判断基準を記憶していることです。それをAIに1回で渡してしまいます。

明文化する基準は3点セットです。

  1. 優先順位:何を何より優先するか(A>B>C)
  2. 絶対NG:何があっても避けたいこと
  3. 迷ったときのデフォルト:判断がつかないケースでの初期設定

Day 17のGoldilocks Altitude(3層指示)と似た構造ですが、あちらが「タスクの指示の書き方」なのに対し、こちらは「自分自身の価値観の言語化」が主役です。なお、この型は特定の研究に基づくものではなく、AIに判断を任せる場面で広く使われている実務的な設計パターンです。

なぜ効くのか

①「一般論への訂正」がなくなる
AIの一般論がズレるのは、あなたの優先順位を知らないからです。基準を先に渡せば、最初の提案からあなた仕様で返ってきます。訂正のやり取りが丸ごと消えます。

②曖昧なケースでAIが「勝手にいい判断」をするようになる
細かい指示でカバーできない場面は必ず出てきます。そのとき基準がなければAIは無難な一般論に逃げますが、「迷ったらこの基準に戻る」と渡してあれば、あなたが選びそうな方向に倒してくれます。

コピペOKプロンプト

相談ごとの冒頭に、以下を付けてください。

この作業の前提として、わたしの判断基準を明文化します。
①優先順位:[A > B > C]
②絶対NG:[X、Y、Z]
③曖昧なケースでのデフォルト判断:[D]
判断に迷う場面では、必ずこの基準に戻ってから判断してください。
そのうえで、以下をお願いします。
依頼:[   ]

①の優先順位は「>」の不等号で書くのがコツです。「どれも大事」と並列に書くと基準として機能しません。あえて順位をつけることに、この型の価値があります。

実践例:before / after

クローゼットの断捨離で、服を手放すか残すかの相談」で試してみました。1着ずつ判断に迷う、基準がモノを言う場面です。

🔴 before:普通のプロンプト

「クローゼットの断捨離をしたいです。服を手放すか残すかの判断を手伝ってください。」

→ 結果:「1年着ていない服は手放しましょう」「ときめくかどうかで判断しましょう」という、断捨離本の目次のような一般論が返ってきました。間違ってはいませんが、個別の服の相談を始めると「思い出の品は無理に手放さなくてもいいですよ」と当たり障りのない回答が続き、結局自分で全部決めることになりました。

🟢 after:判断基準を渡したプロンプト

この作業の前提として、わたしの判断基準を明文化します。
①優先順位:クローゼットの空間確保 > 思い出 > 買ったときの値段
②絶対NG:人からもらった物を「処分」と即断すること。
 冠婚葬祭用は残す。
③曖昧なケースでのデフォルト判断:2年着ていなければ手放す方向で検討。
判断に迷う場面では、必ずこの基準に戻ってから判断してください。
そのうえで、これから服を1着ずつ伝えるので判断を手伝ってください。

→ 結果:「5年前に買った高かったコート、2回しか着てない」と伝えると、「基準①より、買ったときの値段は優先度最下位です。基準③の2年ルールに該当するため、手放す方向を推奨します」と、こちらの基準を根拠にした判断が返ってきました。母からもらったストールを出したときは「基準②に該当するため処分提案はしません。保管方法の工夫を提案します」とNGラインもきちんと守られました。1着ごとの判断が、驚くほど速くなりました。

使いどころと注意点

✅ こんな場面で使う

  • 同じ種類の判断が何度も発生するタスク(片付け・買い物・選択の連続)
  • 「うちの場合は違う」と訂正した経験のある相談ごと
  • 家族や自分のこだわりが強く関わるテーマ

❌ これには向いていない

  • 自分の基準がまだ固まっていないとき(先に基準づくり自体をAIと相談する方が先)
  • 基準が不要な事実の質問

注意点として、明文化した基準は「仮決め」で構いません。運用してみて「やっぱり思い出の方が大事だった」と感じたら、基準を書き換えればいいだけです。最初から完璧な自己分析をする必要はありません。むしろ、AIとのやり取りを通じて自分の基準が明確になっていくのがこの型の副産物です。

🔧 上級者向け:基準セットを保存して使い回す

ここは応用の話なので、読み飛ばしてOKです。

一度書いた判断基準は、テーマごとにメモアプリへ保存しておくと資産になります。「買い物の基準」「時間の使い方の基準」「人付き合いの基準」。相談のたびに冒頭へ貼るだけで、どの会話でもAIがあなたの代理人として立ち上がります。また、AIツールによっては、ユーザー情報を記憶する機能やカスタム指示の設定欄があります。そこにこの基準を登録しておけば、毎回貼る手間も省けます。

まとめ

  • Intent Encodingは「優先順位・絶対NG・デフォルト判断」の3点を先に渡す型
  • 優先順位は不等号で。並列に書くと基準にならない
  • 基準は仮決めでOK。運用しながら書き換えて育てる

毎回同じ訂正をしているテーマがあれば、その訂正の中身こそがあなたの判断基準です。次に相談するとき、それを冒頭の3行にして渡してみてください。

⚠️ この記事の情報は執筆時点(2026年6月)の内容です。AIツールの仕様・挙動はアップデートで変わることがあります。最終確認は各サービスの公式サイトや一次情報でお願いします。

次回予告

次回は第4章の最終回、「Specification Layer(仕様書レイヤー)」を紹介します。品質基準やマイルールを「仕様書」として文書化し、毎回の作業の起点にする型です。作業の再現性が一気に上がります。

👉Specification Layerとは?マイ仕様書でAIの作業を安定させるプロンプト術

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